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「ロシア市場での成功の鍵は信頼関係の構築」フォークリフト事業で見えた中小企業のロシア進出戦略

はじめに:なぜ今、ロシア市場への進出を検討すべきなのか

日本の中小企業がグローバル展開を模索する中で、ロシア市場は独特の魅力と可能性を秘めた市場として注目されています。約1億4400万人の人口を持つロシアは、豊富な天然資源を背景とした経済力と、急速に発達する産業インフラにより、多くの日本企業にとって重要なビジネスチャンスとなり得ます。

しかし、ロシアでのビジネス展開には、他の国とは異なる特殊性があることも事実です。文化的背景、商習慣、そして何より「人間関係」を重視するロシア独特のビジネス環境を理解することが、成功への重要な鍵となります。

今回は、フォークリフト事業の海外展開において、モスクワでのディーラー立ち上げから軌道に乗せるまでを3〜4年かけて手がけた吉田哲様に、ロシア市場での実体験をお聞きしました。現地法人の設立、販売会社との関係構築、そして最終的にトップシェア獲得に至るまでの貴重な経験談から、中小企業がロシアで成功するための実践的なノウハウをお伝えします。

 


インタビュー:吉田哲様(フォークリフト事業海外営業担当)

吉田様

吉田 哲 様

日系大手商社で長年海外営業に従事。フォークリフト事業の海外展開において、モスクワでのディーラー立ち上げから軌道に乗せるまでを3〜4年かけて手がけた。


プロジェクトの概要:モスクワでのディーラー立ち上げ

編集部: まず、ロシアでのプロジェクトの全体像について教えてください。

吉田様: 私が担当したのは、フォークリフトディーラー(現地法人)をモスクワで立ち上げ、軌道に乗せるプロジェクトでした。期間としては3〜4年を要しました。現地法人を立ち上げる前から、ロシアを含め旧ソ連圏には複数の販売会社が存在していたんです。現地法人設立後は、その販売会社の取りまとめも含めて、私が担当することになりました。

 

ロシア人の特性:「ウェットな人たち」との関係構築

編集部: ロシアでのビジネスにおいて、日本とは異なる特殊性を感じられたとのことですが。

吉田様: ロシア人の特性として強く感じたのは、彼らが非常に「ウェットな人たち」だということです。義理人情が厚く、一度受けた恩を決して忘れない。そういう意味で、日本人的な感覚と通じる部分もあるんです。

だからこそ、「Giveの精神」で接することが重要になります。まず相手のためになることを考え、行動で示す。そうすることで、長期的には必ず良い関係が築けるというのが、ロシアビジネスの基本だと思います。

 

最初の試練:「ビジネスの乗っ取り」疑惑

編集部: しかし、最初はスムーズではなかったとお聞きしています。

吉田様: そうなんです。現地の販売会社の取りまとめを始めた時、全ての販売会社の社長から「ビジネスを乗っ取ろうとしているんじゃないか」という疑いを持たれてしまいました。
それまで出張の際には信頼関係を作れていたつもりでしたが、現地法人のフォークリフト販売責任者という立場になった途端、敵対されてしまったんです。これは本当にショックでした。

編集部: その状況をどのように乗り越えられたのでしょうか?

吉田様: 社長達への最初の説明では信じてもらえませんでしたが、「乗っ取るわけではなく、むしろ彼らの売上を伸ばすことに貢献したい」という方針を明確にして、その後の数年間は行動で示し続けました。
言葉だけでは信用されない。ロシアでは特に、行動で示すことが何より重要だということを学びました。

 

実践的な信頼構築戦略:サービス体制の革新

編集部: 具体的にはどのような行動で信頼を獲得していったのでしょうか?

吉田様: フォークリフトのサービスで最も重要だった「部品の即納率向上」に全力で取り組みました。販売会社は中小企業のため、十分な在庫を持てないという課題がありました。

そこで、モスクワ、サンクトペテルブルク等に自社の部品在庫を持ち各販売店にも部品を供給し、彼らの部品の即納率を大幅に向上させたんです。

編集部: それ以外にも何か工夫をされましたか?

吉田様: 競合他社との協力関係も構築しました。同じブランドのフォークリフトを扱っている他の商社とも協力して、在庫を相互に利用できるシステムを作りました。さらに、ロシア近隣国のディーラーとも協力関係を結び、必要な部品を融通してもらうことで、即納率をさらに向上させました。

また、販売店のニーズを聞いて、すぐ実行することも心がけました。地方では珍しい日本人として販売店のキャンペーンや展示会等のイベントに客寄せ役として呼んでもらって、そこで私がその販売店の宣伝をしたんです。

 

転機:「本当にわかってくれる日本人」として認められた瞬間

編集部: 信頼関係の転機となった出来事はありましたか?

吉田様:1年経って再び全体会議があったんですが、その時に販売会社の社長達に自分の抱えている悩みを相談したんです。すると「やっと自分たちの悩みを本当にわかってくれる日本人が来てくれた」と言ってもらえました。この瞬間、ようやく仲間として認めてもらえたと感じました。
それまでは「日本本社の人間」として見られていましたが、この時から「我々の仲間」として扱ってもらえるようになったんです。

編集部: その後の関係はどう変化しましたか?

吉田様: 劇的に変わりました。複数の地方に工場を持つ大手ユーザーへの本社営業なども共同で行うようになりました。一緒に各業界のトップ企業を攻略するという、戦略的な協力関係まで築けました。

 

成功の果実:トップシェア獲得

編集部: 最終的な成果はいかがでしたか?

吉田様: 最終的に、私たちが扱っていたフォークリフトがロシア市場でトップシェアを獲得することができました。これは、現地の販売会社、競合他社、そして周辺諸国のディーラーとの協力関係があってこそ実現できた成果だと思います。

編集部: 一方で、何か失敗談もあれば教えてください。

吉田様: 実は、競合先日本ブランドのロシア人社長とも個人的に仲良くなったんですが、これが「引き抜きをしようとしている」と誤解され、日本人責任者から出禁にされてしまいました(笑)。
ロシアでは人間関係が深くなりがちで、それが時として誤解を招くこともあるという教訓でした。

 

ロシアビジネス成功の鍵:文化理解の重要性

編集部: ロシアでビジネスを成功させるために、最も重要なことは何でしょうか?

吉田様: やはり「信頼構築が全て」だと思います。そして、その信頼構築のためには、ロシアの歴史、文化を理解し、酒の席でのジョークなども含めて、彼らの感覚を理解することが重要です。

ロシア人は形式的な関係よりも、人間対人間の関係を重視します。一度信頼されれば、どんな困難があっても協力してくれる。逆に、信頼を失えば、ビジネスは成り立たない。そういう市場だということを理解する必要があります。

 


まとめ:ロシア進出成功の鍵は「人間関係」にあり

吉田様の貴重な体験談から浮き彫りになったのは、ロシアでのビジネス成功には「人間関係」が何より重要だということです。技術力や製品力も大切ですが、それらを活かすための基盤となるのは、現地パートナーや顧客との深い信頼関係です。

ロシア進出成功の5つの要素:

  1. 信頼関係の構築:言葉よりも行動で示す誠実さ
  2. 文化理解:ロシア人の特性と商習慣への深い理解
  3. 長期的視点:短期的な成果よりも関係構築を重視
  4. サービス革新:現地ニーズに応える具体的な価値提供
  5. 協業精神:競合他社とも協力できる柔軟性

中小企業にとって、ロシア進出は確かに大きな挑戦です。しかし、適切な準備と現地の文化に対する敬意、そして何より「人間関係」を大切にする姿勢があれば、必ず成功への道筋が見えてきます。

日本企業が持つ技術力と品質へのこだわり、そして誠実なビジネススタイルは、ロシア市場でも高く評価される強みです。吉田様の経験を参考に、ロシア市場での新たなビジネスチャンスを掴んでいただければと思います。

重要なポイント:

  • ロシアビジネスは信頼構築が全て
  • 3〜4年の長期的視点で取り組む
  • 現地の文化と人間関係を深く理解する
  • 競合他社とも協力できる柔軟性を持つ
  • 行動で示すことが何より重要

 


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