インド市場への進出を検討している中小企業の経営者・海外担当者必見。医療機器の事業開発から自動車部品販売まで、幅広い業界でインドビジネスを展開してきたA氏による生の体験談をお届けします。現地駐在から日本での事業開発まで、多角的な視点からインド市場攻略の実践ノウハウを解説いただきます。
現職: インド企業日本支社 セールスマネージャー(研究機関向けライティングサポート事業)
前職: 医療機器メーカー 事業開発担当(インド市場開拓)
前々職: 大手商社グループ会社 営業マネージャー(インド駐在・自動車部品販売)
インド現地駐在経験を活かし、医療機器から自動車部品、研究支援サービスまで幅広い分野でインドビジネスを展開。現地スタッフマネジメントから許認可取得まで、実務レベルでの豊富な経験を持つ。
──医療機器分野でのインド進出について、どのような取り組みをされたのでしょうか?
前職では医療機器のプロトタイプがあり、それをどうインドの医療現場で活用できるかを模索していました。代表がインドにご縁があったこともあり、私のインド駐在経験を活かして現地展開を担当することになりました。
重要だったのは、いきなり販売を目指すのではなく、まず現地のニーズを正確に把握することでした。病院の先生方や研究機関の方々とディスカッションを重ね、投資家の方々にもプレゼンテーションを行いました。
──具体的にはどのような活動をされたのでしょうか?
現地の医療機器展示会への出展やピッチイベントへの参加を通じて、ネットワーク構築に注力しました。感触としては明確にニーズはあると感じましたが、同時に大きな課題も見えてきました。
それは現地の許認可取得です。インドで医療機器を販売するには、現地の規制に対応した許認可を取得する必要があります。この点で、現地に精通したパートナーの重要性を痛感しました。単独で進出するよりも、現地のネットワークを持つパートナーとの協業が不可欠だと実感しています。
──医療機器業界でのインド進出で重要なポイントは何でしょうか?
第一に、現地の医療ニーズの正確な把握です。日本で有効な医療機器でも、インドの医療環境や患者の特性に合わないケースがあります。現地の医師や研究者との対話を通じて、真のニーズを探ることが重要です。
第二に、許認可の複雑さへの対応です。インドの医療機器規制は年々厳格化しており、専門知識を持つ現地パートナーなしでは非常に困難です。
第三に、長期的な視点でのネットワーク構築です。医療機器は信頼性が最も重要な要素ですから、短期的な売上よりも信頼関係の構築を優先すべきです。
──インド駐在時代の自動車部品事業について教えてください。
大手商社グループ会社でインドに駐在し、自動車メーカー向けの鉄鋼部品供給事業の営業マネージャーを務めていました。主にTier1サプライヤーに対する営業活動を行い、現地のインド人営業スタッフ10名をマネジメントしていました。
この経験で最も学んだのは、日本とインドでのコミュニケーションスタイルの違いです。日本では間接的な表現でも相手に意図が伝わることが多いですが、インドでは直接的に、しかも相手が納得するまで明確に伝える必要があります。
──具体的にはどのような課題があったのでしょうか?
例えば、1週間前に依頼した作業が期限になっても完了していないケースが頻繁にありました。最初は「なぜやってくれないのか」と困惑しましたが、これは相手が内容を十分理解していない、または優先順位が伝わっていないことが原因でした。
インドのビジネス文化では、トップダウンの意思決定が重視される傾向があります。部下が動いてくれない場合、上司から指示してもらうことで解決することが多いのですが、毎回上司に頼むわけにもいきません。ここぞという時に限定して、強いメッセージを発信してもらうことを心がけました。
──現地スタッフマネジメントで成功するコツは何でしょうか?
まず、文化的差異を理解することです。インドのスタッフは決してサボっているわけではなく、彼らなりの効率的な方法を模索しています。この前提を理解せずに日本式のマネジメントを押し付けると、双方にとって不幸な結果となります。
次に、明確で具体的な指示を出すことです。曖昧な指示では期待通りの結果は得られません。期限、品質基準、報告方法まで詳細に伝える必要があります。
最後に、信頼関係の構築です。インドでは人間関係が非常に重視されます。仕事だけでなく、スタッフの家族のことや文化的背景に関心を示すことで、より良い関係を築くことができます。
──現在の研究機関向けライティングサポート事業について教えてください。
現在はインド企業の日本支社でセールスマネージャーを務めており、日本の研究機関向けにライティングサポートサービスを提供しています。これは私にとって新しい業界への挑戦でもありました。
インド企業が日本市場に進出する際の課題として、言語の壁があります。優秀な技術やサービスを持っていても、それを日本語で適切に表現することが困難な場合が多いのです。私の役割は、そのギャップを埋めることです。
──インド企業の日本進出支援で重要なポイントは何でしょうか?
日本市場の特殊性を理解してもらうことです。日本では品質に対する要求が非常に高く、細部まで完璧を求められます。また、長期的な関係構築を重視する文化があり、短期的な成果を求めるよりも信頼関係の醸成が重要です。
一方で、インド企業の柔軟性や革新性は日本市場でも高く評価される要素です。この強みを活かしながら、日本市場の要求水準に合わせたサービス提供を実現することが成功の鍵となります。
インドは多様性に富んだ国です。宗教、言語、商習慣が地域によって大きく異なります。表面的な理解ではなく、深いレベルでの現地理解が成功の前提条件です。
いきなり大規模投資をするのではなく、小さく始めて徐々に拡大していくアプローチが重要です。テストマーケティングから始め、手応えを確認しながら投資規模を拡大していくことをお勧めします。
インドでは人間関係が極めて重要です。短期的な利益を追求するよりも、現地パートナーや顧客との長期的な信頼関係の構築を優先することが、最終的には大きな成功につながります。
インド市場は確かに大きな可能性を秘めていますが、準備不足で進出すると大きなリスクを伴います。今回ご紹介した実践的なノウハウを参考に、しっかりとした準備と現地理解を基盤として、段階的にビジネスを拡大していくことをお勧めします。
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